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Y. NISHIDA, S. NISHINO, L.L. GUO, M. KUNITA, H. MATSUSHIMA and T. TOKII, “DNA promotes the activation of oxygen molecule by binuclear cobalt(II) compounds,” Inorg. Chem. Commun. 2, 609 (1999).

S. NISHINO, M. KUNITA, Y. KANI, S. OHBA, H. MATSUSHIMA, T. TOKII and Y. NISHIDA. “Cleavage of C-N bond of Peptide Group by Copper(II)-peroxideAdduct with η1-Coordination Mode.” Inorg. Chem. Commun. 3, 145 (2000).

Y. NISHIDA, “Important role of Proton in Activation of Oxygen Molecule in Heme-Containing Oxygenases,” Inorg. Chem.

Commun. 3, 310 (2000).

T. KOBAYASHI, S. NISHINO, H. MASUDA, H. EINAGA and Y. NISHIDA, “Detection of complex formation between binuclear iron(III)-peroxide adduct and oligonucleotide by electrospray mass spectrometry,” Inorg. Chem. Commun. 3, 608 (2000).

C ) 研究活動の課題と展望

金属錯体による酸素分子の活性化について、従来の定説には納得ができず、新しい機構の提案に精力を傾けてきた。自分 とすれば、私の新しい機構での解釈のほうが、これまでの実験事実、特に生体中での活性酸素を議論するときには有効で、

従来の考えは全部捨てたほうが良いと思っている。この新しい考えのもとで、神経性疾患などへの新薬の合成を行いつつ ある。

*)2000 年 4月 1日山形大学理学部教授

海老原 昌 弘(助教授)

*)

A -1)専門領域:錯体化学

A -2)研究課題:

a) ランタン型複核錯体をビルディングブロックとする相互作用系の構築 b) 新奇ランタン型複核錯体の合成に関する研究

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) 金属原子間に多重結合を持つクラスター錯体の最も基本的な骨格の1つであるランタン型複核錯体をビルディン グブロックとして,架橋配位子や軸配位子に他のユニットと結合出来るものを選択することにより,1次元から3 次元の相互作用系を構築していくことを目的に研究を行っている.この内,ロジウム複核錯体カチオンラジカルと NaX  (X  = C l, B r, I) の反応によりロジウム複核錯体で初めてハロゲン架橋1次元鎖状構造を持つ化合物を得ること に成功した.また,π共役系架橋配位子を持つロジウム複核錯体カチオンラジカルで金属原子間δ 型軌道と配位子 のπ軌道との相互作用により配位子上に拡がった不対電子の相互作用により,3次元的に結晶全体に拡がった相互 作用系が構築されることを見いだした.

b) 報告例の非常に少ないランタン型イリジウム複核錯体の合成法を開発し,その物性を明らかにすべく研究を行って きた.容易な合成法を見い出した酢酸架橋イリジウム複核錯体を原料として架橋配位子を置換することによりπ共 役系架橋配位子を持つ錯体を合成することに成功した.

B -1) 学術論文

T. KAWAMURA, H. KACHI, H. FUJII, C. KACHI-TERAJIMA, Y. KAWAMURA, N. KANEMATSU, M. EBIHARA, K. SUGIMOTO, T. KURODA-SOWA and M. MUNAKATA, “δMM*-πL Odd Electron Delocalization onto Aromatic Bridging Ligands in a Paramagnetic Dirhodium Complex and Intermolecular p-Stack Interaction in Crystal,” Bull. Chem. Soc. Jpn. 73, 657 (2000).

Z. YANG, M. EBIHARA and T. KAWAMURA, “Homogeneous hydrogenation of olefins catalyzed by a novel tetrarhodium(II) complex as precursor in aqueous solution,” J. Mol. Catal. A: Chem. 158, 509 (2000).

Z. YANG, T. FUJINAMI, M. EBIHARA, K. NAKAJIMA, H. KITAGAWA and T. KAWAMURA, “Halide-Bridged Zigzag Chain of Tetrakis(acetoamidato)dirhodium Cationic Radical Assisted by Hydrogen Bond,” Chem. Lett. 1006 (2000).

C ) 研究活動の課題と展望

近年,金属クラスター骨格を用いた新たな3次元ネットワーク系の構築が盛んに行われている.このような系を構築していく 基本単位としてランタン型複核錯体は適したものの1つと考えられる.ランタン型骨格は金属原子間に結合を持つ化合物の 最も基本的なものであり,金属−金属間の結合の電子状態は3dや4dの金属原子についてはよくわかっており,架橋配位子 や軸配位子の選択により様々な相互作用系の構築が期待される.一方で,金属原子間,金属原子−配位子間の結合は周期 表下位の原子同士で強くなることが期待でき,5d金属を用いればさらに強い相互作用系を構築できると期待される.しかし,

ランタン型イリジウム複核錯体は同族のロジウム複核錯体と比べて合成例が極めて少ない.この点から,まず現在はまだ確

立されていない合成法を開発することが必要でり,第1段階としての複核錯体ユニットの合成に成功しているので,これをさ らに発展させ多くのイリジウム複核錯体を合成し,新たなイリジウム錯体の化学を展開させて行きたい.

*)2000年 4月 1日岐阜大学工学部助教授

錯体触媒研究部門

魚 住 泰 広(教授)

*)

A -1)専門領域:有機合成化学,有機金属化学

A -2)研究課題:

a) 完全水系メデイア中での触媒的有機変換反応 b) 新規不斉錯体触媒の開発と触媒的不斉合成反応 c) 固定化高機能錯体触媒の開発

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) 触媒的有機変換反応の中でも高い効率性と汎用性を示す遷移金属錯体触媒反応の完全水系メディア中での実施を 試みた.特に基礎化学的研究対象としても工業的応用面でも重要なパラジウム触媒,ロジウム触媒に関して検討し た.その結果,両親媒性高分子であるポリエチレングリコール上に担持されたこれら金属錯体は水中での有機変換 を円滑に触媒することを確立した.具体的には,後周期遷移金属種に対する最も一般的な配位子であるトリアリー ルホスフィンをポリエチレングリコール上に共有結合で接続し,同ホスフィンとパラジウム.ロジウムとの配位結 合を経る錯体形成に基づき高分子担持錯体を調製した.パラジウム錯体は,パラジウム固有の代表的触媒反応であ るアリル位置換反応,挿入反応,交差カップリング反応に関して水中で十分な触媒機能を示した.ロジウム錯体はア ルキン類の3量化によるベンゼン環形成反応,アルケン類のヒドロホルミル化反応を水中で触媒した.

b) 新しい不斉配位子の設計・合成と同配位子と遷移金属種との錯体形成による不斉触媒創製を検討した.不斉配位子 の設計においては,既存のキラル素子の利用範囲を越えるべく,全く新しいキラル素子の探索から研究を開始した.

シンコナアルカロイド類は種々の不斉有機合成上有効なキラル素子である.その構造的特徴を範として,橋頭位に キラル中心窒素を有するビシクロアミンのコンビナトリアル合成法を確立した.調製された光学活性ビシクロアミ ンライブラリーを用いた幾つかのスクリーニング実施によりピロロ[1,2-c]イミダゾロン骨格が不斉誘起能力の高い ユニットとして特定された.同骨格を基本ユニットとする新しいキレート型不斉配位子を合成し,その遷移金属錯 体触媒不斉反応への適用を検討しつつある.

c) 以上に述べたa)、b)の成果は全てポリスチレン高分子ビーズ上への固定化が実施され,不均一系での高機能触媒へと 展開されている.これにより簡便に回収再利用が可能な実用性に富む触媒となっている.

B -1) 学術論文

T. HAYASHI, S. HIRATE, K. KITAYAMA, H. TSUJI, A. TORII and Y. UOZUMI, “Modification of Chiral Monodentate Phosphine (MOP) Ligands for Palladium-Catalyzed Asymmetric Hydrosilylation of Styrenes,” Chem. Lett. 1272 (2000).

M. KAWATSURA, Y. UOZUMI, M. OGASAWARA and T. HAYASHI, “Palladium-Catalyzed Asymmetric Reduction of Racemic Allylic Esters with Formic Acid: Effects of Phosphine Ligands on Isomerization of π-Allylpalladium Intermediates and Enantioselectivity,” Tetrahedron 56, 2247 (2000).

K. SHIBATOMI, T. NAKAHASHI and Y. UOZUMI, “Michael Reactions in Water Using Amphiphilic Resin-Supported Quaternary Ammonium Hydroxides,” Synlett 11, 1643 (2000).

B -3) 総説、著書

魚住泰広 , 「両親媒性固相担持パラジウム錯体触媒」, 和光純薬時報 68, 6-8 (2000).

魚住泰広 , 「均一系触媒開発におけるコンビナトリアルケミストリーの展開」, 化学工業 51, 59-65 (2000).

魚住泰広、青木一真、新開一郎、福山透 , 「創薬に活躍する有機金属」, ファルマシア 36, 597-602 (2000).

魚住泰広、水野哲孝 , 「コンビケム手法の触媒開発への応用」, 化学工学 64, 279-280 (2000).

B -4) 招待講演

魚住泰広 , 「完全水系メディア中での遷移金属触媒反応」, T A K A S A GO S Y MPOS IUM 2000年 , 東京 , 2000年 5 月 . 魚住泰広 , 「完全水系メディア中での遷移金属触媒反応」, B anyu 85th A nniversary S ymposium, 仙台 , 2000年 6 月 . 魚住泰広, “Water-Based Catalyses by Using of Amphiphilic Resin-Supported Palladium-Phosphine Complexes”「固相合成 を利用した遷移金属触媒創製への新しいアプローチ」, 大阪工研協会有機合成セミナー , 大阪 , 2000年 10月 .

魚住泰広 , 「非有機溶媒中の高効率触媒的不斉合成」, 新化学発展協会先端化学技術部会講演会 , 東京 , 2000年 11 月 . Y. UOZUMI, “Palladium-catalyzed organic reactions in water by use of PEG-PS resin-supported palladium-phosphine complexes,” Pacifichem 2000, Hawaii (U. S. A.), December 2000.

Y. UOZUMI, “Novel immobilized palladium-phosphine complexes for asymmetric catalysis in water: Identified and optimized from parallel synthetic libraries, Pacifichem 2000, Hawaii (U. S. A.), December 2000.

B -6) 学会および社会的活動

日本学術振興会第 116委員会委員(2000).

有機合成化学協会評議員(2000).

化学技術戦略推進機構分科会委員(2000).

コンビナトリアル・ケミストリー代表幹事(2000).

B -7) 他大学での講義、客員

北海道教育大学 , 2000 年 4月−9月 . 名古屋市立大学薬学部 , 2000 年 4月−9月 . 東京工業大学理工学部 , 2000 年 12 月−2001年 3月 . 名古屋大学工学部 , 2000 年 4月−5月 .

C ) 研究活動の課題と展望

現在遂行中の研究課題は「研究活動の概略」項にて述べた通り順調に推進されておりネガティヴな問題点は皆無である.

特に水中での有機変換工程を実施する一般的手法として,両親媒性高分子担体の利用を提案,実施し,その高機能性を 示したことは,今後の完全水系メディア中での有機分子変換研究の基本手法となりえる.生体内有機分子変換は完全水系 でなされるものの,それら分子変換現象を分子レベルで理解し,利用する試みは極めて稀である.我々の手法により有機変 換は「試験管内での純化学的手法」で水中実施が可能となる.例えば疎水性相互作用により駆動し制御される有機変換工 程の理解,設計,実施を試み,次世代における有機反応制御の新概念へと繋ぎたい.

錯体触媒を利用した有機変換工程としては種々の酸化反応を試みる.酸化反応は有機変換の根幹を形成する大きな変換

形式であるにも関わらず,未だに工業的利用が可能な有用な手法はほとんど存在しない.有機合成反応開発の命題ともい えるこの課題の解決は基礎化学的なブレークスルー無しには達成できないだろう.我々はすでに錯体触媒反応の水中実施 を進めつつあり,例えば過酸化水素水を利用するなど,水中反応実施の基本手法,基本概念を自家薬籠中のものとする我々 にこそ試行可能な標的反応である.

従来の有機変換の枠組みを越えた反応系である水中有機分子変換の波及効果は計り知れない.

*)2000年 4月 1日着任

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